福祉社会学研究
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ソーシャル・キャピタルとNPO・ボランティア
田中 敬文
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2007 年 2007 巻 4 号 p. 27-43

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抄録

近年,我が国のコミュニティの特徴を分析し評価する概念として,ソーシャル・キャピタル(SC)という用語が注目されている.SCは,「人々の協調行動を活発にすることによって社会の効率性を高めることのできる,『信頼』『規範』『ネットワーク』といった社会組織の特徴」(R.パットナム)と定義される.NPO・ボランティア等の市民活動は,SCを創造する要素,またはSCの指標のひとつである.SCの培養とNPO等の市民活動の活性化とは,互いに他を高めるという「ポジティブ・フィードバックな関係」があると考えられる.都道府県別のSC統合指数は,完全失業率や刑法犯認知件数と負の,合計特殊出生率と正の関係が見いだされることから,SCはコミュニティにおける健康増進や福利の向上,治安の改善に影響を及ぼすことが明らかとなった.
この20年では,SCが相対的に豊かな地方都市で減少している可能性と,大都市部で横ばいまたは回復の可能性がある.コミュニティ機能を再生させるためには,活動の担い手となる地縁団体またはNPOを活性化させ,自分たちで地域の課題を解決するという明確な認識を持つことが鍵となろう.結合型SCは内部の結束が強いため,排他的な行動や自由の制限という危険性がある.これに対して,橋渡し型SCは,外部との関係強化や外部の機会へのアクセス増大につながることから,コミュニティにおける信頼や協力を図る上で重要となろう.

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