福祉社会学研究
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Print ISSN : 1349-3337
ソーシャル・キャピタルと健康
藤澤 由和
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2007 年 2007 巻 4 号 p. 44-60

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抄録

ソーシャル・キャピタルという考え方に対しては, 現在, 学術分野における関心のみならず, 多様な政策領域においても関心が高まっている. その理由としてはソーシャル・キャピタル概念の多様性とその適応可能性といったものがあるのであるが, 健康との関連性においてソーシャル・キャピタルを検討する研究領域においても, ソーシャル・キャピタルの捉え方に関しては多様な考え方が存在してきたといえる. また当該研究領域, なかでも公衆衛生学の分野などを中心に, 過去20年以降多くの多様な領域の研究者らの関心を集めてきた健康に対する社会的決定因を検討する研究の流れは, この分野においてソーシャル・キャピタル概念を導入するための一つの背景となっているといえる. なかでも所得格差が健康に与える影響の問題また健康の地域格差といった論点は, とくにソーシャル・キャピタル概念を, 健康との関連性において検討しようとする研究領域において重要な方向性, 具体的には地域レベルの特徴とその変化を実証的にとらえるという方向性を与えてきたといえる. そこで本論は, こうした健康とソーシャル・キャピタルの関係性を検討する研究領域における理論的な背景とこれまで行われてきた代表的な実証的研究を概観し, 福祉領域などをはじめとする他の地域を検討せざるを得ない領域におけるソーシャル・キャピタル概念の可能性を検討することとする.

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