抄録
国内15道県で採集したクマタカ Spizaetus nipalensis orientalis の羽毛中11微量元素 (Pb, Cd, Cu, Zn, Ni, Cr, As, Mn, V, Se, Hg) とミトコンドリアDNAを測定した。DNA分析の結果,130検体中102検体が51個体に帰属することが判明した。羽毛より検出された微量元素(平均±SE)は,Pb 4.72±0.28 μg/g, Cd 0.20±0.02 μg/g, Cu 8.57±0.54 μg/g, Zn 44.9±2.0 μg/g, Ni 1.05±0.08 μg/g, Cr 0.74±0.06 μg/g, As 0.21±0.02 μg/g, Mn 19.2±2.3 μg/g, V 0.49±0.05 μg/g, Se 0.94±0.03 μg/g, Hg 5.74±0.47 μg/g であった。Hgについては地域に有意差があることがわかった。また,DNA解析結果を加味することで,個体として評価した結果,地域差よりも個体差が大きく,同一個体内でも羽毛部位による差があることがわかった。また,換羽順序に依存する水銀を指標とした結果,初列風切羽の換羽が初期に開始されることが伺われた。さらに,剥製検体の胸の羽毛を分析することにより,1980年代以降,クマタカにおけるCd濃度が増加したことが示唆された。