山階鳥類学雑誌
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原著論文
南関東地方における有毒草本植物テンナンショウ属の果実食者
鈴木 惟司前田 尚子
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2014 年 45 巻 2 号 p. 77-91

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抄録

テンナンショウ属Arisaema(サトイモ科Araceae)は良く目立つ鮮紅色の集合果(果実序)を生産する。本属の果実は鳥によって摂食され,その種子は鳥によって散布されると考えられている。しかしテンナンショウ属の種が多数知られている日本でも,その果実食者(種子散布者)についての詳しい調査は未だ行われていない。著者らは,南関東低地で生育するミミガタテンナンショウA. limbatumとカントウマムシグサA. serratumを対象にして,自動撮影カメラを利用してその主要な果実食者を調査した。ミミガタとカントウは植物本体や果実の形状・サイズなど似通っているが,前者では夏季の7–8月に,後者では秋10月以降に鮮紅色の成熟果実が出現するという違いがある。調査は2008–2013年の期間に東京都八王子市内(多摩丘陵)と神奈川県秦野市内(丹沢山麓)の二次林で行われた。なお結果的に資料は概ね後者で得られている。ミミガタの果実を採取した鳥はヒヨドリHypsipetes amaurotis 1種であった。ヒヨドリは本種にとって最重要な果実食者と見なせた。このほかアカネズミApodemus speciosusも果実を採取するのを確認した。本種は果実というより種子を摂食していた。一方,カントウでは8種の鳥が果実食者として記録された。そのうち主要と思われるのはヒヨドリ,ルリビタキTarsiger cyanurus,シロハラTurdus pallidusおよびヤマドリSyrmaticus soemmerringiiの4種であった。他の4種はソウシチョウLeiothrix lutea(外来種),トラツグミZoothera dauma,アカハラT. chrysolaus,ジョウビタキPhoenicurus auroreusである。またそれ以外にアカネズミ属の個体による採食も記録された。

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