2022 年 54 巻 1 号 p. 193-200
セイタカシギHimantopus himantopus himantopusの繁殖地ならびに非繁殖地において,44例の代用物に対する性行動(SBTSOs)が観察された.これらの行動は1年を通して見られたが,大部分は繁殖期の初期に観察された.行動の対象は土塊,水中から突き出たアシの茎片,ビニール片,水中から突き出た棒片,ジュースのアルミ缶,テニスボールであった.成鳥雄による1例,親離れ前の若鳥による3例,そして親離れ後の若鳥による40例が見られた.若鳥の43例のうち3例は雄であることがわかった.SBTSOsで行われた行動のすべては,通常の性行動の中で,雄によって行われるものであったので,残りの若鳥についても雄であると推察された.これらの行動の適応的意味について考察した.