山階鳥類研究所研究報告
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セキセイインコの若鳥と成鳥における1日の飲水パターンとアンギオテンシンへの反応性
糟谷 洋子大河原 雄児関 薫小林 英司
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1987 年 19 巻 1 号 p. 1-12

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抄録

セキセイインコの若鳥12羽(2-3ヶ月令)と成鳥7羽(8ヶ月令以上)を,それぞれ1984年4月5日と5月5日に購入して,12L12D,約23°Cで飼育し,13-14ヶ月にわたり,各々9回飲水量を測定した。また,アンギオテンシンIIに対する反応性を,若鳥8羽,成鳥7羽で調べた。
(1) 購入2週間後の若鳥,また6日後の成鳥は,それぞれ,19:00の消灯前かその後にピークがある1峰性の1日の飲水パターンを示した。しかし,購入4-5ヶ月以後(1984年9月)の観察では,両者共に点灯直後と消灯直前に飲水が多く,2峰性の飲水パターンを示した。2峰性は若鳥の方が成鳥より明瞭であった。しかし,両者ともに1985年6月にはピークは低く,2峰性はあまり顕著でなくなった。
(2) 1日の飲水量のパターンと,1日の湿度の変化との間には相関関係はみられなかった。
(3) 昼間1時間当りに飲水をした鳥の数のパーセントの1日の平均値は,若鳥では購入2週間後に38.9%であり,成鳥では購入1.5ヶ月後に14.3%であった。すなわち,若鳥は昼間の2-3時間に1回の割合で飲水を行い,成鳥では7時間に1回の割合で飲水をした。その後は,両者共に,平均値は50%をこえ,飲水は約2時間に1回の割合で行われた。しかし,若鳥の平均値は,常に成鳥よりも大きかった。このことは,若鳥は成鳥よりも飲水頻度が大きいことを示す。
(4) 若鳥の1日の飲水量は,購入2週間後(4月18日)では1-2mlであったが,その後次第に増し,7ヶ月後(1984年11月)には約3.3mlに増え,この飲水量は翌年,1985年6月まで続いた。成鳥では,購入1.5ヶ月後(6月26日)では約1mlであったが,その後増加し,約10ヶ月後(1985年3月)には3mlとなったが,その後減少し6月には約1.5mlとなった。1日の飲水量は,常に若鳥が成鳥よりも多かった。
(5) 1日の総飲水量の平均値と1日の湿度の平均値との間には相関関係がみられた。
(6) 購入2週間後の若鳥と1.5ヶ月後の成鳥では,夜間における飲水量は昼間のそれよりも多かったが,その後,それぞれ,その関係は逆になり,昼間に多く飲水するようになった。1日のうちで昼間に飲む飲水量の割合は,若鳥の方が成鳥よりも常に多かった。
(7) アンギオテンシンII(10μg/100g)を腹腔内注射したところ,若鳥では注射の何れの月においても50%以上(通常約80%)の鳥が反応して飲水したが,成鳥では通常約30%の鳥しか反応しないし,10月の注射では1羽も反応しなかった。
(8) セキセイインコを購入し,研究室の動物舎に移してから約1年間にみられた飲水量の諸変化及びアンギオテンシンIIに対する反応性の変化に関し,種々の点から検討を加えた。

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