山階鳥類研究所研究報告
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アカヒゲ Erithacus komadori の分布と亜種の問題について
川路 則友樋口 広芳
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1989 年 21 巻 2 号 p. 224-233

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抄録

1) トカラ列島中之島および平島の現地調査,ならびに文献,確実な情報収集などによって,アカヒゲの現在および過去における正確な分布を調べた。
2) これまで知られていた,北は男女群島から南は与那国島までの島々での生息記録に,新たに朝鮮江原道(山階鳥類研究所所蔵),鹿児島県霧島(九州大学農学部所蔵の標本)の2採集例と,台湾和平島での越冬観察例が加えられた。
3) トカラ列島では繁殖期に多数個体が見られるものの,冬期にはほとんど見られなくなる。また,琉球列島南部の八重山諸島では秋期および早春期の記録があるものの,夏期にはほとんど観察されていない。このことから,より北方のアカヒゲ個体群は,越冬期により南部へ移動することが予想された。
4) ウスアカヒゲ E.k.subrufus の模式標本を亜種アカヒゲ E.k.komadori の標本と比較したところ,Kuroda(1923)により記載されている前者の標徴形質は後者の範疇に含まれ,ウスアカヒゲは亜種アカヒゲのsynonymと考えられた。
5) アカヒゲは以前にかなり広い地域に生息していたものが,現在は南西諸島を中心に遺存固有の分布を示すようになったと考えられた。

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