山階鳥類研究所研究報告
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ホオジロの繁殖期の生活について
山岸 哲
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1970 年 6 巻 1-2 号 p. 103-130

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抄録

1.この研究はホオジロ(Emberiza cioides)の繁殖期生活の特殊性を明らかにするため,1965年から1967年まで長野県長野市近郊の畑地で行った。
2.ホオジロの隣接する数番の営巣開始は非常にシンクロナイズされていて,4月下旬から5月上旬にはじまる。
3.営巣は雌のみによって行われ,営巣日数は3~9日で,平均6日であるが,繁殖シーズンの早期営巣者では長く,晩期営巣者では短い。
4.巣の形はopen nestであり,置くようにして作られる。巣材運搬の回数は外張りではげしく,内張りでは少ない。巣の構築に費す時間は外張りでは短く,平均25秒であり,内張りでは長く平均220秒である。交尾は内張りの時期に主として地上で行われる。
5.卵やヒナが天敵に食害されると,その日のうち,または翌日から直ちに新しい巣を別の場所へ作る。その場合,前の巣から平均29mはなれたところに再営巣される。
6.営巣場所は地上と樹上の1m以下が大部分であるが,第2回目以後の巣は樹上へ構築される傾向がある。
7.産卵は1日1卵であり,早朝5時から6時の間に行われる。平均一腹産卵数は4.4であるが,シーズン早期から晩期に向って平均5.0~3.5と減少する。
8.抱卵は雌のみによって最終卵産下後から行われ,抱卵日数は平均11.16日であった。日中の抱卵活動は平均分58.3巣内にいて,平均25.5分巣を空けている。Skutch(1962)の抱卵率は67.3%であった。また抱卵中の雌への雄からの給餌は見られない。
9.抱雛は孵化後6日目頃まで行われるが,これはヒナの本羽の羽鞘が出はじめる時期と一致する。雌は給餌後15分間抱雛する。
10.育雛には雄も雌も参加するが,給餌回数から見た雄雌の仕事率は約50%ずつと言える。ヒナ1羽あたり1時間の給餌回数は,平均0.45であり,給餌間隔は平均26.6分であるが,初期と晩期にはやや少ない。巣内育雛日数は約11日である。
11.巣立ちヒナは巣立ち後25~29日間,親のホームレンジ内で養われ,その後親のホームレンジから消える。直ちに親は第2繁殖の営巣にかかる。
12.ホオジロが営巣を開始してから幼鳥を独立させるまでの1繁殖サイクルに要する日数は58~65日で約2ケ月間と言える。
13.ホオジロの小田切個体群の増大を繁殖期において調整している重要な部分は卵やヒナの天敵の食害による孵化率の低さであり,産卵数に対する巣立ち率は20~35%を示す。

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