山階鳥類研究所研究報告
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日本におけるカラ類群集構造の研究
II摂食場所,食物の季節的変動および生態的分離
中村 登流
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1970 年 6 巻 1-2 号 p. 141-169

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抄録
1.本州に棲息する同所性カラ類について,その生態的分離の状況を摂食位置と食物の比較によって分析した。
2.生態的分離は夏よりも冬にいちぢるしい。
3.落葉広葉樹及びカラマツではエナガとシジュウカラの共存がいちぢるしく両種は上下,内外,小枝と幹,枝をわかっている。
4.樹木内の冠部ではエナガとヒガラの共存がいちぢるしいが,樹種,枝上の位置をわかっている。カラマツではエナガの位置は安定しており,ヒガラの位置は不安定である。それは小枝が氷や雪におおわれる危期にはっきりする。
5.西南日本のシジュウカラとヤマガラの共存はいちぢるしいが,樹林内の上層と下層をわかっている。ヤマガラの位置はヨーロッパのアオガラに相当する。
6.亜高山帯のヒガラとコガラは樹種をわかっている。ヒガラは針葉樹を好み,局地的な食物量産に左右されやすく,移住する。コガラは落葉広葉樹を好み,定住性であり,林内下層部,特に枯枝に摂食することが多い。
7.エナガとParus属では食物内容が異る。Parus属各種でも,それぞれ異る領域を持っている。
8.ヒガラ,コガラ,ヤマガラは食物貯蔵をおこなう。亜高山帯のヒガラとコガラは食物貯蔵の場所と種類を違えている。両種の貯蔵行動の生物学的意義は異る。ヒガラは局地的な種子生産の変動に左右されるものであり,コガラは有色果実から草本の種子を含めた安定した貯蔵をおこなう。
9.樹林内でのカラ類の生態的分離は樹冠部で鋭く,複雑となり,下層床部では単純である。
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