抄録
クマタカSpizaetus nipalensisの採餌生態を理解することは、クマタカが生存と繁殖のために依存する環境条件を特定するたあに重要である。しかし,これまで本種の捕食の詳細な分析が報告されたことはなかった。筆者はニワトリGallus gallus var.domesticusをおとりに用いてクマタカを誘引し,2004年9月9日および16日に攻撃の瞬間から摂食終了までの一連の捕食行動を記録した。クマタカの攻撃から摂食終了までの所要時間はそれぞれ182分と142分だった。個体識別はできなかったが,捕食行動の順序と捕食部位はそれぞれ異なっていた。9日のクマタカは羽毛の除去を摂食前に集中的に行ったが,16日の個体は摂食前だけでなく摂食中にも分割して行った。また捕食部位は,9日の個体はニワトリの後半身と消化器官,16日の個体は前半身だった。クマタカは林縁のニワトリに対して林の内側から降下してニワトリに襲いかかったこと,襲撃の1~2秒前までニワトリがクマタカの存在に気づいた様子は見られなかったこと,クマタカによる羽毛除去と肉の引きちぎりは体の前後運動で行われたこと,クマタカは摂食後ニワトリの死体を持ち去ろうとしなかったことは両日の観察で共通していた。