硫黄は生体反応に必要な様々な物質に含まれており,動植物の生育に不可欠な元素である.植物は無機硫黄を有機硫黄に同化する硫黄同化系を有するのに対し,動物は硫黄同化系をもたず植物が合成した硫黄代謝物を摂取して有機硫黄源として利用するため,植物の硫黄同化系は植物のみならず動物にとっても重要な代謝経路であるといえる.植物の硫黄同化に関与する遺伝子については,近年,ポストゲノム的手法を用いた研究によりイソ酵素群の機能分担の解明や,同化系の制御因子の同定が進んでいる.ここでは,植物の硫黄同化系とその制御について,モデル植物のシロイヌナズナを材料として進められた研究を中心に紹介する.