2012 年 50 巻 10 号 p. 730-741
21世紀最初の10年は,環境微生物学・微生物生態学における第二の革命期であったと言えるだろう.言うまでもなく,それは次世代シークエンサーの登場とそれを活用した環境ゲノム解析技術の驚くべき発展によるものである.1990年代の16S rRNA遺伝子に基づいた培養に依存しない複合微生物系解析技術の誕生による第一の革命期から,大規模シークエンシング技術による環境ゲノム科学の時代を経て,今後期待される第三の革命は何であろうか.筆者らは,環境微生物の分離培養技術の革新がそれにあたるのではないか,と考えている.本稿では,環境ゲノム解析の現状を概観しつつ,この大規模シークエンス解析時代の中で少しずつ光の見えてきた未知微生物探索の現状と課題について述べる.