2013 年 51 巻 12 号 p. 809-820
糸状菌は,菌糸の先端を伸長させることで生長する.その生長様式は,極性生長の解析に適したモデルであり,糸状菌の病原性や高い酵素分泌能にも関連している.菌糸生長には,菌糸先端での持続的な極性の維持が必要である.その極性を制御するため,菌糸先端の形質膜における位置情報を介して,微小管とアクチン細胞骨格が協調的に機能することが明らかとなってきた.本稿は,糸状菌の細胞骨格と形質膜ドメインの役割を概説するとともに,極性の維持・確立・焦点化・再構築という各々の現象に着目し,極性生長の総合的な理解を目指すものである.