化学と生物
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解説
“フェアリーリング”の化学と“フェアリー化合物”の植物成長調節剤としての可能性
河岸 洋和
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2014 年 52 巻 10 号 p. 665-670

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抄録

公園,ゴルフ場,住宅街などで,芝が輪状に周囲より色濃く繁茂し,時には成長が抑制されたり枯れたりし,後にキノコが発生する現象は「フェアリーリング(fairy ring,妖精の輪)」と呼ばれている.筆者らは,フェアリーリングを形成するコムラサキシメジが産生するフェアリーの正体(芝を繁茂させる原因)が2-アザヒポキサンチン(AHX)とイミダゾール-4-カルボキシアミド(ICA)であることを突き止めた.また,植物中でのAHXの代謝産物,2-アザ-8-オキソヒポキサンチン(AOH)を得ることにも成功した.これらの化合物(フェアリー化合物)は試したあらゆる植物に活性を示すことから,筆者は「これらの化合物は植物自身も作り出しているのでは?」と考えた.そして,それを証明し植物体内での生合成経路も明らかにした.フェアリー化合物はさまざまな作物の収量を増加させ,農業への応用が期待される.

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© 2014 by Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
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