化学と生物
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解説
ミトコンドリアの融合と分裂
その意義と制御機構
伴 匡人後藤 雅史石原 直忠
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2015 年 53 巻 1 号 p. 27-33

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抄録

ミトコンドリアは細胞内のエネルギー生産のみならずさまざまな細胞機能に関与する多機能なオルガネラである.ミトコンドリアは細長く枝分かれ構造をもつが,同時に活発な融合と分裂サイクルによりその形態を変化させており,このダイナミクスの制御には種を超えて保存されたGTPase群が機能している.近年,哺乳類においてこれらの関連遺伝子の欠損マウスが構築されたことで,初期発生や組織形成への効果など個体における機能が明らかになりつつある.さらに精製タンパク質や人工脂質膜小胞を用いた解析により,融合・分裂の際のGTPaseの挙動,脂質膜形態の変形機構が示されつつある.また最近ではミトコンドリアの形態制御異常が,神経変性疾患,代謝疾患や老化などに関与することから,融合と分裂の分子機構はさらに大きな注目を集めつつある.ここでは哺乳類を中心にミトコンドリアの形態制御に関する最新の知見を踏まえて概説する.

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© 2015 by Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
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