化学と生物
Online ISSN : 1883-6852
Print ISSN : 0453-073X
ISSN-L : 0453-073X
解説
食べ物の「こく」を科学するその現状と展望
西村 敏英江草 愛
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 54 巻 2 号 p. 102-108

詳細
抄録

「こく」は,現在,おいしさと同義語で使用されている場合が多い.しかし,「こく」は,味,香り,食感,色,艶と同様に,それぞれの食べ物が有する特性の一つであり,おいしさを決める要因である.「こく」には強弱が存在し,それぞれの食べ物に適した「こく」の強さでおいしさが付与される.「こく」は,食べ物の持つ味,香り,食感による複数の刺激から形成される複雑さによる特性である.これらの複数の刺激は,その食べ物の特徴を決める味わいのベースとなる部分であり,さらに持続性や広がりが付与されたときに「こく」が感じられる.このベース部分からできる味わいに持続性や広がりを与えることができる重要な成分として,現在,うま味物質と油脂が挙げられる.このうち,うま味物質は,味や香りからなる風味質を強くすると同時に広がりや持続性を与える.また,油脂は香気成分を保持することで,「こく」の特性である持続性を与えることができることがわかってきた.

著者関連情報
© 2016 by Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
前の記事 次の記事
feedback
Top