2017 年 55 巻 5 号 p. 326-332
2016年のノーベル医学生理学賞を受賞された大隅良典先生のオートファジーに関する研究は,酵母の突然変異株の取得と原因遺伝子の解析により大きく進展した.酵母は究極のモデル真核生物として,これまでも細胞周期やタンパク質輸送系など,さまざまな生命現象の解明に大きく貢献してきたが,今回の受賞は研究対象としての酵母の有用性を改めて示した.一方,生命科学の研究を効率的に進展させるためには,研究材料すなわちバイオリソースをいかに有効に活用するかが極めて重要である.ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)は,世界最高水準のライフサイエンス基盤整備を進める目的で2002年度からスタートした国家プロジェクトである.NBRP酵母はプロジェクトスタート時から参画しており,これまで15年にわたる事業で,世界トップクラスの酵母リソース機関となった.本稿では,NBRP酵母事業の内容,重要性を紹介し,今後のあり方について考えてみたい.