2018 年 56 巻 5 号 p. 317-323
シークエンス技術の発展に伴って,ゲノムを網羅する多型データに基づいた進化研究が近年盛んである.特に,一つの種,もしくは近縁な複数の種について,多数のサンプルのゲノム配列に基づいた解析を行う「集団ゲノミクス」研究が進んでいる.集団ゲノムデータを解析することで,過去の個体数変動や集団の分化の過程,あるいは各遺伝子に働く自然選択圧を推定できるだけでなく,ゲノムワイド関連解析を用いて自然変異にかかわる遺伝子を同定することも可能である.このレビューでは,特に研究が進むシロイヌナズナとその近縁種の事例の紹介を中心に,集団ゲノミクスの概念や利用法を解説する.