2018 年 57 巻 1 号 p. 21-28
生物はどうやって温度を感じるのか? 非常にシンプルな問いであるが,わからないことが多い.これまで,さまざまな生物で温度センサー分子が報告されているが,植物では一つも見つかっていなかった.筆者らは,植物細胞で起こる温度依存性の葉緑体配置変化について研究し,最近,青色光受容体フォトトロピンが温度センサー分子であることを発見した.また,この発見を基盤にして,生物の温度感知に関する新しい説を提唱している.本稿では,青色光受容体フォトトロピンによる温度感知のメカニズムを解説するだけでなく,これの解明にたどりつくまでの10年間について記録したいと思う.