化学と生物
Online ISSN : 1883-6852
Print ISSN : 0453-073X
ISSN-L : 0453-073X
解説
認知機能における脳グリコーゲンの生理的役割とそれに及ぼす運動効果
征矢 茉莉子征矢 英昭
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 57 巻 11 号 p. 672-678

詳細
抄録

貯蔵糖質であるグリコーゲンは筋などの末梢組織だけでなく,脳のアストロサイトにも貯蔵され,ニューロンのエネルギー需要増大時の重要なエネルギー源となる.この時,グリコーゲン分解により生成された乳酸はアストロサイトからニューロンへと輸送され(アストロサイト–ニューロン乳酸シャトル),これが学習・記憶を司る海馬において長期記憶を形成する重要なメカニズムの一つと考えられている.長期的な運動トレーニングは海馬のグリコーゲン代謝に影響を及ぼし認知機能を高めることが明らかとなり,脳とりわけ海馬のグリコーゲン代謝を標的とした運動トレーニングが認知機能向上に有効なスポーツコンディショニングとなり得ることや,低下した認知機能への対抗策として臨床応用の可能性が示唆された.

著者関連情報
© 2019 公益社団法人日本農芸化学会
前の記事 次の記事
feedback
Top