2019 年 57 巻 2 号 p. 108-114
1928年に青カビの代謝産物から世界初の抗生物質となるペニシリンが発見されて以来,微生物から数多くの生物活性物質が発見され,医薬品の開発に多大なる貢献を果たして来た.1990年代になると科学技術の発展とともに製薬業界でもロボットによる化合物合成が採用されることになり,手間とコストのかかる微生物創薬が衰退していった.しかし,現在でも上市されている医薬品の約6割は天然化合物に関連していると言われている.微生物創薬の歴史を振り返りながら「日本」という立場と筆者の専門である菌類学の見地から現状と将来の可能性について紹介したい.