2019 年 57 巻 5 号 p. 289-295
35億年あまりの永い進化の産物である地球上の多種多様な生物.それらのなかには「毒素」という武器をもつ生物も存在します.これらの毒生物は,どのように進化して毒をもつに至ったのでしょうか? 近年ゲノム解析技術の進展により,モデル生物以外のゲノムも解析することが可能となり,生物進化を読み解くための一つの重要なツールとなっています(1).毒動物のゲノム解読や個々の毒成分の全容をプロテオームやトランスクリプトーム解析により明らかにする「ベノミクス研究」も進められてきました.ここでは,毒蛇ハブのゲノム解読を中心に,「ベノミクス研究」の最前線について解説します.