2019 年 57 巻 8 号 p. 463-471
植物ポリフェノールは,ヒトの生活に関係の深い身近な化合物群である.比較的単純な構造を持つものから,かなり入り組んだ複雑な高次構造を持つものまでの多種多様な構造を持つものが知られ,生理活性も多様である.古くから有機合成化学者は,これらのポリフェノール類の構造や特異な反応性と面白い生理活性に惹かれ,合成研究を展開してきた.21世紀入ると,目を見張るような進展があった.21世紀以前と対比させながら,鍵反応と合成戦略の進歩を解説したい.本解説では,特にフラボンとフラボノール,カテキン,プロアントシアニジン,エラジタンニン,フラバグリンの有機合成化学に焦点をあてた.