2023 年 61 巻 3 号 p. 116-124
微生物の有用な機能を利用した植物病害の防除は生物的防除(バイオコントロール)と呼ばれ,化学農薬の代替として期待される.Pseudomonas tolaasiiによる病害は,多くのきのこ類で報告されており,主にきのこ子実体の腐敗症状を引き起こす重要病害である.本病害を対象とした登録農薬は,国内に存在しないため,微生物を活用した生物的防除法の開発が求められている.現在まで,国内外で本病害に対する生物的防除に関する研究が行われており,それらは微生物の様々な機能を駆使した興味深いものが多い.そこで本解説では,筆者らが取り組んでいる研究を交えて,それぞれの防除機構と効果について俯瞰してみたい.