2023 年 61 巻 4 号 p. 163-171
青枯病菌はナス科を中心とした250以上の植物種に感染し,青枯病を引き起こすグラム陰性の植物病原細菌である.これまでに,本病の有効な化学防除法は確立していない.近年,青枯病菌は土壌真菌類にも寄生することが報告された.この真菌寄生は,宿主植物が育っていなくても,青枯病菌が圃場に潜伏し続ける原因の1つである可能性がある.植物と真菌のいずれに感染する場合も,青枯病菌はクオラムセンシング(QS)という同種細胞間の化学コミュニケーションを利用する.本解説では,QS阻害によるトマト青枯病菌の予防・治療に向けた筆者らの取り組みを紹介する.