現代選挙制度と代表制民主主義その正統性は、いわゆる「民主主義の危機」と呼ばれる一連の議論から大きな疑問を投げかけられている。本論文では、こうした現代選挙制度と代表制民主主義の改善策あるいはオルタナティブとして近年注目を集める、籤引きを用いた民主主義の構想であるロトクラシー(Lottocracy)に着目し、その展望と課題をそれぞれ考察するものである。ロトクラシーはこれまで「選挙制度と比べてどの点で優れているか(あるいはいないか)」という点に焦点が当てられ議論されることが多かったが、本論文ではロトクラシーの 3 つのシナリオ(二院制、法案拒否権に限定した市民院、選挙なきロトクラシー)同士を比較・検討することでロトクラシーの可能性と限界を論じていく。これらの 3 つのシナリオの比較を通し、ロトクラシーの理論上の魅力を出来る限り保ちつつも、実現可能性のあるロトクラシーのあり方を考察する。