開智国際大学紀要
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依存性パーソナリティ障害の査定過程における 日米文化差に関する一考察
鳥越 淳一
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2022 年 21 巻 2 号 p. 149-160

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抄録
本稿は,日本人臨床家と米国人臨床家の依存性パーソナリティ障害(以下 DPD)の査定過程にどのような違いがあるかを考察することを目的としている。査定者の観察を数値化する SWAP-200 を介してアセスメントを行なった結果,米国人が典型的な DPD と理解する「DPD のプロトタイプ」(無力で従属的でしがみつくように過度の依存を求める人)は,日本人が理解する DPD の臨床像(消極的で離れていくことで他者に救済心を喚起し依存を許してもらう弱者)とは無相関であった。このような結果になったのは,米国では「依存」が非自律(非自立)性を意味し,査定者にとっては自我異和的で軽蔑の対象として映るのに対し,日本では「甘え」で説明されるような相手の善意をあてにして何かをしてもらいたいという欲求に基づく相互作用であり,査定者にとっては自我親和的であるためだと考えられる。日本において依存は「甘え」として文化に深く根差した感情であり,独特の対人関係パターンを規定している。そのため,DPD に関しては,原版 SWAP-200 とは異なる形で見直す必要があるように思われる。
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