ベトナム北部に注ぐRed Riverに隣接するMa Riverの河口部沿岸域では,近年侵食問題に直面している.本研究では,まず対象海岸線の表層土砂試料に対し粒径分析,粒子群の組成分析,長石粒子の熱ルミネッセンス信号の分析を実施し,両河川の土砂供給の影響範囲の推定を試みた.次にMa River河口域に注目し,衛星画像に基づく汀線および河口部における水位変動の特性を分析し,汀線変化モデルによる再現を通じて土砂動態の解明を試みた.その結果,Ma River河口部沿岸域での侵食に対するRed riverの影響は小さいこと,河口からの土砂供給量および沿岸漂砂量は比較的小さく,特に河口と南部の岩礁に挟まれた領域ではポケットビーチ化して平衡状態に近づきつつあることなどが分かった.