土木学会論文集B2(海岸工学)
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71 巻, 2 号
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論文
  • 中山 恵介
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_1-I_6
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     水深に対して20%以上の大振幅を持つソリトン共鳴に関して,数値計算や室内実験に基づく解析が存在するが,水深に対して10%程度のソリトン波に関する研究成果は少ない.そこで本研究では,強非線形強分散波動方程式モデルを利用して表面ソリトン波の斜め境界における反射・共鳴による大振幅ソリトン波の再現計算を行った.その結果,最大の増幅率が3.5~3.6であることが分かり,過去の研究成果を超える共鳴による増幅率が得られた.さらに,入射波の3.6倍という最大の増幅率が発生するためには,共鳴後のソリトン波形状がKdV解でも再現出来る程度の振幅である必要性が示唆された.それらを踏まえ,過去の研究で示された巨大な入射波を与えた際の増幅率の抑制は,KP方程式やBoussinesq方程式よりも高次の再現モデルを利用することで再現可能性であると予想された.
  • 池澤 広貴, 下園 武範, 佐藤 愼司
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_7-I_12
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     2011年3月11日東北地方太平洋沖地震に伴う大津波によって海岸堤防とその後背地が壊滅的な被害を受けた.今後の津波防災において堤防越流に伴う後背地のリスク評価が重要となるが,従来の氾濫モデルでは堤防の効果が十分に反映されていない.本研究では台形断面を有する堤防の越流問題を対象として非静水圧を考慮した鉛直積分型の堤防越流モデルを開発した.モデルは堤防を急勾配地形として扱うため,堤防を含む領域においてシームレスな氾濫計算が可能となる.また,断面二次元水路による堤防越流実験を行い,モデルの再現性を検証した.その結果,従来の静水圧近似に基づくモデルでは越流水深の大きい場合に大幅な過小評価につながる一方,本モデルでは鉛直加速度に起因する非静水圧を考慮することで実験結果を高精度に再現できることが示された.
  • 鶴田 修己, 後藤 仁志, 鈴木 高二朗, 下迫 健一郎, Abbas KHAYYER, 五十里 洋行
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_13-I_18
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     数値波動水槽の導入に際しては計算コストを考慮した実用的な運用が求められるため,計算領域において制限を受けることとなる.そのため,実際の実験水路の再現には,解析領域に極力影響を及ぼさないための境界条件すなわち開放境界条件を設け,水路の延長部を擬似的に再現することが必要となる.一方,数値波動水槽の一つである粒子法では,計算粒子座標が常に変動することから,流入を含む開放境界条件の設定は,安定計算に必須な粒子の均等配列維持の観点から極めて困難であり,その開発が十分に進んでいないのが現状である.本研究では,高精度水表面境界条件モデル(SPP)と高精度壁面モデル(WP粒子)を用いて,設定水位を一定に保つことが可能な流入出開放境界条件モデルを新たに構築し,粒子法を用いた数値波動水槽の汎用性の向上を目指す.
  • 五十里 洋行, 後藤 仁志, 反保 朋也, 江尻 知幸
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_19-I_24
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     巨大津波による防波堤の倒壊事例では,越流水の落下流による防波堤背後の砂地盤洗掘が主たる原因の一つである.本研究では,越流洗掘現象の再現の基礎的検証として,実験室規模の鉛直噴流洗掘計算を粒子法を用いて実施する.まず,砂地盤変形の精度を高めるために,応力・ひずみ速度に依存して値が増減する係数を適用した拡散項を砂地盤変形モデルに導入し,砂柱崩壊計算を通じてその効果を検証したところ,堆積形状や崩壊過程に関して既往の実験結果との良好な一致が確認できた.次に,鉛直噴流計算において,計算粒径以下の粒径の微細土砂に対して,巻き上げ・移流・拡散・沈降・堆積の全過程を一貫して記述できるサブモデルを導入したところ,継続した洗掘の進行の再現が可能となり,最大洗掘深についても既往の水理実験結果と良好に対応した.
  • 後藤 仁志, KHAYYER Abbas, 五十里 洋行, 清水 裕真
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_25-I_30
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     MPS法は自由表面を含む非圧縮性流体の大変形問題の解析に優れていることから,海岸工学に関わる様々な問題に用いられてきた.近年,MPS法の高精度化手法が多数提案され,また計算機の性能が向上してきていることに伴って,砕波や越波といった現象の,より正確かつ大規模な再現が可能になりつつある.しかしながら,既存のMPS法ではエネルギーの保存性については保証はほとんどされていない.
     そこで本稿では,波の伝播に関するベンチマークテストを実施し,高精度MPS法のエネルギー保存性について検証する.さらに,高精度MPS法の波浪伝播計算への適用性を検討する.
  • 寺岡 諒祐, 杉原 裕司, 松永 信博
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_31-I_36
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     本研究では,微小振幅の水面変動を考慮した開水路乱流場の直接数値シミュレーション(DNS)を実行し,水面変動が気液界面のガス交換機構に及ぼす影響について検討する.開水路底部で発生する管状渦が崩壊し,水表面に到達することで水面変動をもたらしていることを確認した.水面の上昇領域では,正の界面発散が大きくなり,下降領域では負の発散値をもつことがわかった.また,水面上昇域では界面ガスフラックスが定性的に増大することを示した.水面変動がある場合でもガス交換と界面発散運動が密接に結び付いていることを確認した.局所的な界面発散モデル解と本計算結果との比較を行った結果,界面発散が大きい領域ではフルード数とともにガス交換速度が相対的に大きくなり,水面変動がガス交換を促進させることがわかった.
  • 渡部 靖憲, 牧田 拓也, 小柳津 遥陽
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_37-I_42
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     本研究では,砕波による気泡混入機構を明らかにすることを目的として,砕波ジェットのモデルである平面ジェットの着水に伴って形成されるキャビティの変形から気泡放出に至る過程をLEDバックライト法を用いた高速高解像可視化実験を行った.気泡生成のソースとなるキャビティの形状,発達過程,時空間的変動スケールと発生確率密度を解析し,変形を支配する力学機構について議論を行っている.表面張力波の重畳に加え,ジェット下に形成される3次元渦による水面の吸い込み効果がキャビティの成長に影響を与え得ることが3次元乱流計算を通して明らかになった.
  • 渡部 靖憲, 大島 悠揮
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_43-I_48
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     本研究では,遡上波をダムブレーク流れによって模擬し,遡上波フロントの運動学的特徴をレーザー励起可視化実験並びにSRPIVによる流速分布計測によって抽出するものである.遡上斜面勾配に依存して、遡上フロント先端を起点として回転性せん断力が周期的に変動する底面及び水面境界層流れが発達,水面形状を修正することが明らかになった。
  • 猿渡 亜由未, 岡 義久
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_49-I_54
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     底面の形状を (1) 固定平板底面,(2) 移動粒子底面,(3) 固定粒子底面の三種類に変化させた条件下で振動せん断流れの画像計測を行い,底面近傍の流れ場に対する底面の浸透性,浮遊粒子,流動化の有無による影響について調査した.浸透流れや粒子の移動を伴う流れ場の場合,底面位置における流れがゼロ流速条件に拘束され無いことにより底面せん断力の低減や初期底面以下のレベルにおける乱れの生成が生じ得る.本研究では浸透性底面上における底面境界層厚さの減少や粒子底面表層の流動化に伴う底面近傍せん断応力と渦度の減少が生じることを確認した.また底面から巻き上がった浮遊粒子は粒子底面内部で発生した乱れエネルギーの流れ場全体への輸送に寄与することも示された.
  • 藤川 大樹, 田島 芳満, 竹森 涼, 岩塚 雄大, 琴浦 毅, 茅根 創
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_55-I_60
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     サンゴ礫海浜では,粒径が大きく比重が軽いというサンゴ礫の特性から,通常のシリカ底質の海岸とは違った水理特性や海浜変形特性が見られる.本研究では,西表島沖合に位置する,サンゴ礫で形成されたバラス島を調査対象地とし,現地調査及び数値計算に基づき,サンゴ礫海浜の遡上帯における透水特性と堆積特性を明らかにすることを目的とした.表層堆積礫の粒径の分布を分析することにより,高潮位,高波浪時に比較的粒径の大きいサンゴ礫が標高の高い位置まで積み上げられている事が推察された.また,礫層内に設置した波高計の計測結果から,礫層内に波動が浸透している事が確認された.さらに,透水層を考慮した数値計算より,サンゴ礫層における透水係数は通常の砂浜におけるそれに対して大幅に大きいことが明らかとなった.
  • 木村 晃彦, 柿沼 太郎
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_61-I_66
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     砕波を考慮した数値解析に基づき,サーフィンにおいてテイクオフが可能となる条件に関して考察した.まず,水平方向において,サーファが波頂に追い越されないために必要な,パドリングスピードの水平方向成分を検討した.これより大きな水平方向成分を有するパドリングスピードが実現されるとき,テイクオフが可能となる.次に,鉛直方向に関して,水面から力を受けるサーファに働く,波前面に沿う方向の力を検討した.この力が0,または,下向きである位置でテイクオフが可能である.そして,水平及び鉛直方向のテイクオフ可能条件を総合し,各地点でテイクオフが可能な時間内において要求される,パドリングスピードの水平方向成分の時間変化として,対象とした巻き波型及び崩れ波型の砕波型式を示す2種類の波に対するテイクオフ可能条件を示した.
  • 佐藤 愼司, 村上 啓介, 諏訪 義雄, 西 隆一郎, 松田 博貴, 大野 正博, 杉浦 幸彦, 高島 創太郎, 石崎 公康, 近藤 竜二, ...
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_67-I_72
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     2014年に5つの台風が連続して来襲した宮崎海岸において,砕波帯内外の波浪・海浜流と地形変化を分析した.台風時には,主として南からの波浪により,北向きの強い沿岸流が観測されるとともに,30~300sの周期を持つ長周期変動が発達し,その発達特性は台風経路と密接に関連していた.波・流れの観測値から沿岸漂砂量を算出したところ,平均的には南向きの沿岸漂砂が卓越する同海岸において,50万m3を超える北向きの沿岸漂砂が発達したと推定され,これは,台風期前後の地形測量結果と整合的であった.台風時の沿岸漂砂量から,台風の特性に応じて土砂移動特性が大きく変動することが確認された.台風後に三次元的な地形が発達した大炊田海岸において,地形変化と沿岸方向に進行するエッジ波との関連が示唆された.
  • 山口 正隆, 野中 浩一, 畑田 佳男, 井内 国光, 宇都宮 好博, 日野 幹雄
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_73-I_78
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     風波の有義波高Hs,有義波周期Ts,風の摩擦速度u*の間に成立するTobaの3/2乗則(Toba定数BT=0.062)におけるBT(あるいは変量化したToba係数B)の変動性を超強風速を含む最新の実験結果や多地点の観測資料を用いて検討し,つぎの結果を得た.1)HsTsを入力条件とするTakagaki et al.のz0(粗度長)推定式の精度は有意であり,z m高度風速Uzを加えれば,u*Bの適正な評価が可能になる.2)観測資料に基づくBの平均値は地点ごとにかなりの変動(0.0463~0.0679)を伴う.3)観測資料では,Bu*が小さくHsが大きいほど,大きくなる.この挙動はKahma・Calkoenの結果と定性的に整合する.4)Bは用いる海面抵抗係数式ごとに有意な変化(0.0586~0.0625)をする.5)上記の結果はTobaの3/2乗則が厳密な意味では必ずしも成立しないことを示唆する.
  • 橋本 典明, 三井 正雄, 川口 浩二, 横田 雅紀, 小田 圭祐, 濱野 有貴
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_79-I_84
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     高精度な方向スペクトル観測を可能とすることが期待される多層型超音波ドップラー式海象計(DWM)を対象として数値実験および観測データを用いて検討した.本研究では,拡張最尤法(EMLM),ベイズ法(BDM)および拡張最大エントロピー原理法(EMEP)を用いて解析し,それぞれの方法で得られた推定値の精度や安定性を検討した.検討に際しては,DWMのデータ数や組合せを変えた様々な条件で解析し,方向スペクトル推定値の特性を検討した.さらに現地観測データを対象として同様の検討を行った.検討の結果,DWMの計測層数を増やして方向スペクトル推定の基礎となる情報を増やすことにより,方向スペクトルの推定精度が向上することが分かった.BDMおよびEMEPは多量のデータに対しても安定した高精度な方向スペクトルを推定可能であるが,EMLMは不安定になる傾向があることが分かった.
  • 平山 克也, 加島 寛章, 伍井 稔, 成毛 辰徳
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_85-I_90
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     近年では,設計沖波に比べ沖での波高は小さいものの,より長い周期を有する作用波による港湾・海岸構造物の被災事例が散見される.そこで本研究では,我が国沿岸で観測された波浪台帳を風波とうねりに分離するとともに,できるだけ長期間の極大値資料を用いて従来の高波に加え,風波,うねりに対する極値分布及び50年確率沖波を推定し,これらの地域特性を考察した.さらに,代表海域での波浪変形計算を行い,防波堤への作用波の違いを検討した.
     これらの結果,日本海側で稀に出現するうねりは高波となり易いことや,日本海側では風波,太平洋側ではうねりの来襲時に最高波高比が1.8を上回る高波が継続し易いこと,及び太平洋側で出現するうねりの50年確率沖波は,従来の設計よりも大きな最高波高を施設に作用させる場合があること等が判明した.
  • 高嶋 宏, 坪川 将丈, 遠藤 敏雄, 高橋 康弘, 宇都宮 好博, 松藤 絵理子
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_91-I_96
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     近年,うねり性波浪による港湾構造物の被災が増加し,地球温暖化適応策として将来の高波浪時においても防波堤が適切な機能を発揮するための設計沖波算定手法に関する研究が求められている.本研究は,被災時の波浪特性を分析し,うねり性波浪を考慮した設計沖波の必要性を明確にするとともに,設計沖波を算定する手法を提案し,その試算を行った.主要な結論は次のとおりである.(1) 波周期が増加するとケーソン幅が増加する傾向がある.(2) 従来手法に加え,波形勾配0.025未満のデータを用いてうねり性波浪の設計沖波の算定を行い,防波堤の設計作用力は,波浪変形計算を経た上で従来手法とうねり性波浪のうち大きな波圧合力を与える波浪諸元を用いて算定することを提案した.このことにより従来手法では考慮できなかった周期が長く大きな波圧をもつ波を設計波に考慮することができる.
  • 北野 利一, 喜岡 渉
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_97-I_102
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     地球温暖化適応策として沿岸構造物の整備を論じる上で,緊急度や優先度を検討するために,気候変動による影響を検出することは不可欠である.しかしながら,その検出には2種類の過誤を伴う.1つの過誤は,影響が無いのに有るとする空振りの過誤で,もう1つはその逆の見逃しの過誤である.高波や高潮による外力の極値統計を用いた既往の研究では,確率外力の算定に信頼区間を設けることにより,前者の過誤について配慮してきたと言える.しかしながら,極値統計の一般な議論でも,後者の過誤について論じられたことは皆無である.むしろ,後者の過誤の確率を明らかにするだけでなく,適応策の検討において,両者の過誤の確率をいかにバランスさせるかということが重要になる.その際に,極値統計解析で用いられる経験度が有効となることを示す.
  • 森 信人, 志村 智也, 釜堀 弘隆, Arun CHAWLA, 安田 誠宏, 間瀬 肇
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_103-I_108
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     気象庁が開発した55年間の大気再解析値JRA-55をもとに,波浪の長期推算を行った.波浪推算は,スペクトル型波浪モデルWAVEWATCHIIIの2種類のソース項の組み合わせを用いて行った.得られた波浪推算結果をブイおよび衛星高度計の観測値と比較検証し,ERA-40/Interrim に比べて平均波高および極大波高について良い精度を持つことを明らかにした.また年最大有義波高等の極大波浪についても,JRA-55の推算精度は高く,熱帯低気圧の発生域を除くとJRA-55にもとづく極値分布は,観測値にかなり近い分布形状を示すことを明らかにした.
  • 野中 浩一, 山口 正隆, 井内 国光, 日野 幹雄, 畑田 佳男
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_109-I_114
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     近年,高い空間・時間解像度をもつ気象庁による海上風分布(MSM風)資料と最新の第3世代波浪推算モデルSWANのソースプログラムが公表されていることから,本研究では従来の第2世代モデルYH3を含めてこれらを組み合わせた波浪推算システムを日本海における2003年以降の8ケースの異常ストームに適用し,日本の沿岸と韓国東岸の多くの地点において観測値との比較検証を行うとともに,対象ストーム全体の最大波高の空間分布を調べた.この結果,両システムは日本の沿岸部における最大級の異常波浪および韓国東岸におけるうねり性高波浪に対しておおむね良好な再現性をもつが,SWANによるシステムがやや高い精度を与えることや,全対象ストームに伴う最大波高の最大値は東北沖合で13m以上,韓国東岸の北部沖合で9m以上と評価されることを示した.
  • 畑田 佳男, 矢野 竜太郎
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_115-I_120
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     東京湾,伊勢湾,瀬戸内海の波浪推算精度をTaylor図を用いて検討した.Taylor図は推算値と観測値の相関係数と各値の標準偏差の比を図化したものであり,1ストームの経時変化パターンの対応を1点に描画する.波浪推算に用いた風および有義波高の推算結果と観測結果を同図上で比較した.その結果,1)気象擾乱別に描画した同図により,推算精度の悪い擾乱や地点を容易に見つけることができる.2)東京湾領域における波高の推算精度は非内海より内海地点において高いが,伊勢湾,瀬戸内海においては内海と外海の推算精度に系統的な違いが無い.3)波高の推算精度は瀬戸内海,伊勢湾,東京湾の順に高いと判断された.これらからTaylor図は波浪推算精度の評価手段として有用であるといえる.
  • 内山 孝平, 児玉 孔司, 水口 優
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_121-I_126
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     高波浪時における汀線付近の長周期波は,遡上・越波や海岸侵食などの要因の一つと考えられており,その特性を把握し,沖合の波から予測をすることは重要である.本研究では断面水槽での物理実験データを基に,砕波帯における入射長周期波の波高に関して理論的な検討を試みる.まず,長周期波を構成する拘束長周期波と自由長周期波の位相関係に着目し,それらの伝播速度の違いによる分離に対して基本波の周期は寄与しないと近似できることを示す.その結果,現地で観測される汀線付近(砕波後)の入射長周期波の波高は,砕波点での拘束長周期波の波高に比例することになると考えられる.そのようにして得られた推定式を現地観測結果と比較したところ,誤差はあるものの沖波条件から評価可能であることを示した.
  • 鈴木 高二朗, 坪川 将丈
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_127-I_132
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     高潮とその副振動で発生する東京湾表層の流れをHFレーダーによる観測データを用いて調べた.HFレーダーの観測が開始された2005年から2014年までに,晴海の潮位で50cmを超える高潮偏差は15個発生し,このうち10cm以上の副振動(周期6~7時間の副振動)が8個(53%)発生していた.HFレーダーで観測された湾表層流速を調和解析し,天文潮成分を差し引いた残差流速を求めたところ,残差流速は潮位よりも約2時間位相が早く,6~7時間周期の副振動の発生を検知できる可能性があること,また,当該副振動が減衰振動であるため非減衰な振動よりもさらに15~30分ほど位相が早くなっていることが明かとなった.
  • 松尾 俊平, 浅野 敏之
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_133-I_138
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     九州西岸では毎年春先に現地で「あびき」と呼ばれる気象津波の被害を受けている.気象津波の発生・発達は, 気圧波-海面長波の伝搬速度が近接する時の共振効果によるため, 長波の伝搬速度を支配する海底水深の影響を大きく受ける.本研究は, 九州西岸で最大級の海面副振動を観測した2009年2月の気象津波を対象として, 東シナ海から九州・南西諸島海域を含む広域の数値シミュレーションを実施し, 観測された副振動の面的な再現性を検討したものである. 気圧波を西から東に直進させた場合は, 沿岸各地で観測された水位変動の発生順位をほぼ説明することがわかったが, 気圧波の伝搬方向を西から南西側に10度偏向させると, 沖縄トラフの急深部による屈折効果が大きくなり, 観測された水位変動の発生順位を説明しない方向の結果となった.
  • 羽角 華奈子, 織田 幸伸, 本田 隆英
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_139-I_144
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     港湾で発生する長周期波の波高を予測するため,その発生原因のひとつである台風と長周期波高の関係について検討した.長周期波にエネルギーと関連するパラメタとして,台風の最大風速,台風の影響面積を表す台風の強風半径,波の伝播による波高減衰を表す台風位置から観測地点までの距離の3つを取り上げた.また,台風位置における長周期波の発生から,観測地点までの伝播時間を考慮し,3つのパラメタを補正した.長周期波高と上記3つのパラメタの関係を調べた結果,複数の観測地点において,両者は高い相関関係にあることが明らかとなり,波の伝播による時間差および波エネルギーの増減を考慮した予測式の構築の可能性が示された.
  • 佐藤 兼太, 越村 俊一
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_145-I_150
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     3次元流体解析による市街地スケールの大規模津波浸水シミュレーションは,計算負荷・コストの点で依然課題があり,京コンピュータなどのHPCIを活用した事例など,限られた環境でしか実現できていない.陽的な解法であることと並列化効率が高いことは,大規模領域における解析には重要な要件であり,その点で格子ボルツマン法(以下,LBM)が注目されているが,自由表面流れ解析において計算が不安定となりやすいことが報告されている.本研究ではLBMで現れる擬似的な圧縮性に注目し,簡便な非圧縮流体モデルを適用することで計算の安定を図った.本研究で提案した手法により時間刻み幅が大きく,従来のLBMでは計算が不安定となる条件においても安定した解析が可能となった.必要な計算量を従来のLBMと比べ,削減することが可能なモデルを開発した.
  • 深沢 壮騎, 田島 芳満
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_151-I_156
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     津波の河川遡上は氾濫被害の拡大という観点でも重要であるが,データが不足していることもあり十分な検証が進んでいない,2011年の東北地方太平洋沖地震では河川を遡上する津波のビデオ画像が得られ,従来の解析手法では河川遡上の速度を過小評価することが指摘されている.本研究では数値解析手法の違いが津波の遡上速度に与える影響を調べた.段波形成実験の再現計算から,非保存形の解析手法では保存形の解析手法に対して段波の伝播速度を有意に過小評価することが明らかとなった.1次元の河川遡上モデルにおいても同様の傾向が見られ,離散化手法の違いが有意に遡上速度に影響することが示された.
  • 根本 信, 鬼頭 直, 長田 正樹, 平田 賢治
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_157-I_162
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     2011年東北地方太平洋沖地震(M9.0)では,気象庁の巨大津波観測計により東北地方の沿岸各地で10 mにおよぶ高さの津波波形が記録された.巨大津波観測計の記録では,地震発生直後から津波の第一波が到達するまでの間に,比較的短周期の水位変動が観測された.本論文では,この地震発生直後の水位変動を水平方向の地殻変動による津波の励起として説明できるか否か数値シミュレーションを用いて検討を行った.その結果,複数の観測地点について観測波形を良く説明することが分かった.東北地方太平洋沖地震のように沿岸に大きな地殻変動が生じる地震では,地震発生直後から沿岸で水位変動が生じるため防災上注意が必要である.
  • 小園 裕司, 高橋 智幸, 桜庭 雅明, 野島 和也
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_163-I_168
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     2011年に生じた東北津波によって東北沿岸に甚大な被害が生じた.津波の氾濫流と建物等の構造物は相互に影響すると考えられる.本研究では,宮城県気仙沼市を対象に,従来の手法による建物の形状を考慮したシミュレーションを実施し実績被害と比較検討した.また,それらの結果から,建物の倒壊・流失の基準となる波力を推定して,建物の倒壊を考慮した津波シミュレーションを実施した.その結果,津波浸水被害の正確な予測には建物の倒壊を考慮した津波シミュレーションが必要であることを明らかにした.
  • 宮下 卓也, 森 信人, Daniel COX, 安田 誠宏, 間瀬 肇
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_169-I_174
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     静水圧近似した平面2次元(2D)と準3次元(Q3D)モデルを用いて,市街地を対象とした津波遡上実験の再現計算を行った.Q3Dモデルの計算は,遡上波に平行な構造物列間では良好な結果を示すが,構造物背後での計算精度は不十分であった.また,水平渦粘性係数を変化させて行った解析結果より,市街地のように波の進行幅が変わりやすい地形では,渦粘性係数の値が波の進行する速度に大きく影響することが確認された.さらにQ3Dモデルと2Dモデルの解析結果の比較により,浸水深が減少する内陸部においては,同じ計算条件でも2つのモデル間の浸水範囲等の差異が大きくなり,特に2Dモデルでは底面摩擦係数の影響が大きくなることを確認した.
  • 吉川 諒, 柿沼 太郎, 小山 彩, 入部 綱清, 米盛 庄一郎
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_175-I_180
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     MPS法に基づく断面2次元数値モデルを適用し,地すべりや山体崩壊に伴う津波の数値シミュレーションを行なった.崩落する流体の初期位置が等しい場合,崩落体の密度が大きいほど津波高さが大きくなるが,変形して扁平となった流体が水中に突入する場合には,津波高さがあまり大きくならない.また,崩落体が剛体である場合,崩落体の初期位置エネルギーが大きいほど津波高さが大きくなるが,前方に巻き込む波が形成された後,波の前面に大規模渦を伴う津波が伝播する場合,津波高さがあまり大きくならない.更に,岸付近の津波高さは,崩落体が,比重が1の流体である場合には,沖側静水深が浅い場合に大きくなるが,崩落体が,比重が1より大きな剛体である場合には,沖側静水深が深い場合に大きくなる.
  • 松井 大生, 内田 龍彦, 中村 賢人, 服部 敦, 福岡 捷二
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_181-I_186
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     津波の河川遡上・氾濫流解析においては,流れの三次元性を考慮でき,種々の現象を一体的に解析が可能な実用的なモデルが求められている.本研究では,平面二次元解析の枠組みで流速と圧力の鉛直分布を考慮できる一般底面流速解析法を水面の時空間変化の激しい津波解析に応用するため,鉛直方向流速の非定常項と水面での圧力鉛直勾配項を新たに導入した非静水圧津波準三次元解析法を開発した.まず,本解析法を津波河川遡上実験に適用し,実験結果と平面二次元解析法の計算結果との比較から,本解析法の妥当性,有用性を示した.次に,本解析法を用いて,北上川の今次津波の再現解析を行った.計算結果は,全体的な痕跡と津波の到達時間などの特徴を再現した.しかし,計算水位が痕跡水位よりも大きく見積もられており,この差が生じる原因を考察した.
  • 大城 匠, 仲座 栄三, 稲垣 賢人, Md. Mostafizur Rahman, 江頭 翔太
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_187-I_192
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     東北地方太平洋沖地震津波においては,植生帯と運河が存在している箇所で津波の流速の低減や津波到達時間の遅れが生じていたことが明らかにされている.しかし,大津波によって植生帯のほとんどの樹木が引き流されたことから,植生帯と運河が一体的に作用する場合の効果については,十分に解明されていない.本研究では,運河の存在を津波防災対策に積極的に活かす目的から,運河を植生帯の前面に配置し,運河と植生帯の一体化が持つ津波減勢効果を明らかにした.その結果,運河の存在は津波フロントの流速低減と津波到達時間の遅延に効果を発揮し,植生帯の存在は反射波を発生させ,結果として津波の輸送水量を下げることが示された.運河と植生帯を一体化させた場合,運河の持つ津波先端の減勢特性効果と植生の持つ津波減勢効果とが合い重なって現れることを明らかにした.
  • 仲座 栄三, 渡久山 諒, 稲垣 賢人
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_193-I_198
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     南西諸島に点在する巨大な津波石の特徴が示された後に,それらの起源が推定されている.結果は,過去数千年間に大津波が7回来襲したとする従来の定説を否定し,明和津波が唯一で巨大な津波であったことを示唆している.こうした議論内容は,これまでに仲座らが発掘調査などから指摘している明和津波最大説と軌を一つにしている.実験により,こうした巨大津波石の発生メカニズムが調べられ,津波石への衝撃波圧の発生,津波石の水没と移動との関連が議論されている.巨大津波の流体力や最大遡上高を推定する上で,本研究成果は示唆に富む内容となっている.
  • 中條 壮大, 藤木 秀幸, 金 洙列, 森 信人, 澁谷 容子, 安田 誠宏
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_199-I_204
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     比較的高緯度に位置する東京湾では,大きな高潮災害の観測例が少ない.しかし,極低頻度とはいえ高リスクの都市災害に備える必要性から,過去約80年の観測資料から推定される高潮ハザードポテンシャルの定性的評価を行った.東京湾近傍を通過した過去の台風資料から,危険高潮イベントを引き起こすであろう台風特性の変化シナリオを推定した.それらを既往の台風経路上に換装し,非線形長波方程式モデルによる予測計算を実施した.その結果,過去データにもとづく東京における高潮ポテンシャルは最大で約1.8 m程度と見積もられた.また,吹き寄せや湾水振動の作用が強い北進の経路は、東京湾にとって危険性が高いことを示した.特に危険な経路においては,台風接近時の湾口方向の吹き寄せ,および通過後の外力の解放と風向の急変が湾内での振動を卓越させていることを示した.
  • 青木 伸一, 乾 智一, 石野 智也
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_205-I_210
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     台風0918号により三河湾で発生した伊勢湾台風規模の高潮の増幅メカニズムについて検討した.この台風を含め,三河湾近傍を台風が通過する際に急激な風向反転を伴う近年の3つの高潮イベントを対象に,台風モデルと一般的な数値シミュレーション法を用いて高潮の再現計算を行ったところ,伊勢湾側で東風による吹寄せ効果が過小評価となること,台風モデルでは三河湾側で風速が過大となり潮位偏差も過大評価となることがわかった.伊勢湾側の吹寄せが過小評価となる原因を検討するために,密度成層場での風による水面変動について,2次元の線形モデルを用いて検討した.その結果,密度成層が大きいほど吹寄せ効果が大きく現れる可能性があることがわかった.
  • 内山 雄介, 多田 拓晃
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_211-I_216
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     海面気圧による吸い上げ効果およびバルク法熱収支スキームを組み込んだJCOPE2-ROMSダウンスケーリング領域海洋モデルを構築し,我が国に上陸し甚大な土砂災害等をもたらした2014年台風18号,19号を対象とした広域高解像度再解析を行った.海上風,海面気圧,海面フラックスには,台風を含む詳細な気象場を高精度で表現可能な気象庁GPV-MSM再解析値を与えた.観測水位との比較を通じて本モデルが高潮偏差をより正確に再現できることを確認したのち,周防灘および沖縄本島における高潮偏差発生機構の差異について検討した.さらに,台風接近・通過に伴う広域海洋応答について調査し,瀬戸内海の海水流動構造が短期的に大きく変化することを示すとともに,外洋における鉛直混合の強化とそれに伴う水温低下の発生,台風経路との相対的な位置と慣性共鳴との関係などについて評価した.
  • 竹下 哲也, 鈴山 勝之, 諏訪 義雄, 姫野 一樹
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_217-I_222
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     我が国では,一部地域において高潮ハザードマップが作成されているものの,来襲する台風の規模に応じた高潮浸水計算や避難に必要なリードタイムの検討は十分に行われていない.このため,本研究では,東京湾を対象に気象庁の台風区分に対応する高潮浸水計算と避難に係るリードタイムの試算を行った.
     その結果,本研究で設定した想定台風のうち,室戸台風級の中心気圧910hpaの想定台風は気象庁の区分では「非常に強い台風」に該当し,他の区分に該当する台風と比較して浸水範囲が大きいことや,最大旋衡風速半径が大きい想定台風ほど対象海岸から西寄りの経路で潮位偏差が最大となることを確認した.また,避難完了までのリードタイムとして,高潮浸水想定の計算過程で算出される時系列の風速分布を用いて,風速15m/s以上の強風域の到達予定時間を試算した.
  • 金 洙列, 松見 吉晴, 出田 裕二郎, 間瀬 肇, 森 信人, 安田 誠宏
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_223-I_228
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     本研究は,鳥取県境港と浜田港を対象にニュラルネットワーク(ANN)を用いた高潮予測モデルの開発を行ったものである.予測のリードタイムは3時間から30時間まで3時間ずつ増やした計10時点であり,それぞれに対して予測精度の検証を行った.学習に用いるデータは,過去に高潮を起こした台風の観測データと気候変動予測モデル出力を利用した高潮推算値の2種類である.ANN高潮予測モデルの精度向上のために,中間層のユニット数を13個から130個まで13個ずつ増加して精度向上を確かめた.その結果,3時間先予測では最大相関係数は0.99,30時間先予測では最大相関係数は0.97であり,3時間先予測の最低RMSは0.013m,30時間先予測の最低RMSは0.029mであった.
  • 今井 健太郎, 平川 雄太, 会田 俊介, 三戸部 佑太, 高橋 智幸, 今村 文彦
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_229-I_234
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     沿岸湖沼では保存状態の良い津波堆積物を採取できることが多い.津波堆積物に含まれている情報を活用するためにはその形成メカニズムを理解することが重要である.一方で,沿岸湖沼に突入する津波の水理特性には不明な点が多い.本研究では,これらの水理特性を定量的に検討することを目的として,理想地形おける固定床実験を実施した.
     本検討により,津波氾濫流が湖沼に突入するとともに移動跳水が発生し,時々刻々と流況が変化すること,その水位や底面流速の変化は湖沼規模に依存することを示した.さらに,湖沼内における水位や流速は浜堤背後付近で最大になることや,湖沼水深が深くなるにつれて底面の最大流速は急激に減衰する傾向あることを明らかにした.これらの湖沼に突入する津波の水理学的特徴は,湖沼内の津波堆積物形成過程を考察する上で重要な知見を与え得る.
  • 三戸部 佑太, 今井 健太郎, 平川 雄太, 会田 俊介, 高橋 智幸
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_235-I_240
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     津波堆積物からの古津波規模の推定に際し津波外力に対する堆積・浸食パターンについての理解は不可欠であるが,現象の複雑さ・現地流況データ取得の困難さから不明瞭な点が多い.本研究は良好な保存状態の津波堆積物が採取される沿岸湖沼について津波による地形変化特性を明らかにすることを目的とし,移動床の水理実験を行った.
     カラーパターン照明を用いた3次元表面形状画像計測法を適用し,湖沼模型に突入する段波によって生じる湖沼内の堆積・浸食分布を定量的に取得し,さらに津波の湖沼への流入部付近の流況・地形変化過程の詳細を側方からの動画像撮影により観察した.津波による湖沼内の最大浸食深は越流継続時間に大きく依存し,また湖沼の初期水深によって浸食範囲および浸食域背後の堆積厚に大きな差異が生じることが明らかになった.
  • 飯田 立樹, 呉 修一, 有働 恵子, 真野 明, 田中 仁
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_241-I_246
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     東北地方太平洋沖地震津波により破堤した堤防周囲の局所洗掘は,その深さや拡がりが大きく復興において高い障害となった.波による水底侵食の要因はせん断力による土砂移動と液状化である.前者は多くの津波研究で考慮されているが,後者について定量的な評価は行われていない.本研究では洗掘メカニズムの解明を目的にせん断移動と液状化を組み込んだ数値モデルを開発し,大きな津波被害の生じた破堤箇所周辺に実際に適用した.その結果,戻り流れ時に水位が低下し,開口部の堤防端で液状化現象が発生し,せん断力による最大洗掘深と比較して28%の深さまで液状化することが示された.これにより,地盤条件によっては津波の洗掘計算を実施する際,液状化現象も考慮する必要があることが明らかとなった.
  • 今井 健太郎, 菅原 大助, 高橋 智幸, 岩間 俊二, 田中 仁
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_247-I_252
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     2011年東北地方太平洋沖地震津波により,北上川河口部では大規模な地形変化が生じた.日本沿岸において,河口部に土地利用が展開されている地域は多い.津波に伴う地盤洗掘や土砂埋没は復旧・復興の阻害要因となるため,その地形変化の過程を明らかにすることは重要である.
     本研究では,北上川河口部やその周辺地域における地形変化の過程を明らかにすることを目的として,津波土砂移動解析を実施した.本解析結果から,河口砂州の大規模な洗掘は押し波時に生じ,同時に背後耕作地に土砂が堆積したことや河口部沖側の洗掘は引き波時に生じていたことを明らかにした.
  • 大家 隆行, WANG Dong, 高谷 岳志, 荒木 和博, LI Shaowu, 後藤 仁志, 有川 太郎
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_253-I_258
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     東日本大震災では,多くの構造物が津波の越流により被災した.既往研究では,越流水塊により前面または背後地盤が洗掘された場合,構造物の安定性が著しく低下することが指摘されているものの,越流規模と洗掘深の関係はいまだに不明な点が多く,その予測手法についても確立されていない.そこで本研究では,高精度ISPH法に地盤の侵食メカニズムを組み込むとともに,津波越流による洗掘深を再現し,その結果を水理模型実験と比較した.本研究の結果を次に示す.1)洗掘深と越流深との間には高い相関関係がある.2)高精度ISPH法を用いて,防潮堤背後の洗掘を再現し,最大洗掘深の評価が可能である.
  • 高畠 知行, 織田 幸伸, 伊藤 一教, 本田 隆英
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_259-I_264
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     臨海域の発電所では,津波来襲時,取放水路に海水が流入し水路内の水位が上昇して水路の天端(天井)部分に圧力が作用する.本研究では,この圧力の作用特性および評価手法を水理実験及び数値解析により検討した.水理実験の結果,作用する圧力は初期に生じる衝撃圧とその後の静水圧で近似できる領域の二つのフェーズに分類可能であり,衝撃圧の大きさは鉛直垂壁の存在により天端と水面間に空気層が発生する場合,有意に低減されることが示された.また,桟橋を対象とした既存の揚圧力算定式を参考に,この衝撃圧を評価することを試みた.その結果,圧力の最適な算定手法には課題があるものの概ね既存式を用いて評価できることが示された.さらに,OpenFOAMを用いた実験の再現解析を行い,OpenFOAMにより天端に生じる圧力の評価ができる可能性が示された.
  • 丸山 草平, 髙山 知司, 下迫 健一郎, 八尋 明彦, 鈴木 高二朗, 青田 徹, 田中 真史, 松本 朗, 半沢 稔
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_265-I_270
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     消波工による津波波力の低減効果を明らかにすることを目的として,消波ブロック被覆堤に作用するソリトン分裂津波の波圧に関する水理模型実験を実施した.消波工がない場合の波力実験結果から,津波の水平波力算定式として谷本式および修正谷本式の妥当性の確認をするとともに,それらの津波高水深比による適用範囲と静水面の波圧に関する係数の値を明確にした.揚圧力は津波高水深比によらず,一律,谷本式による算定が妥当であることを確認した.消波工で被覆しない状態での波力の算定値と消波工で被覆した防波堤に作用する波力の実験値とを比較検討し,消波工によるソリトン分裂津波の波力低減を精度よく算定する式を提案した.また,消波ブロックの安定実験を行い,風波の設計波高に対する所要質量を有するブロックは,ソリトン分裂津波に対して安定であることを確認した.
  • 福島 有加里, 戎 健次, 中條 壮大, 外村 隆臣, 辻本 剛三, 三宅 雅靖, 柿木 哲哉
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_271-I_276
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     本研究では既往の津波実験での越流時間に加えて実現象の時間スケールを考慮した越流を再現し,構造物へ作用する流体力が長時間継続する越流から受ける影響を明らかにし,2線堤模型の位置・形状による背後の構造物に作用する流体力の時間特性について検討した.その結果,(1)2線堤は越流時間を遅らせる効果がある.(2)越流の形態により構造物に作用する圧力は作用時間に差が見られるが,時間経過と共に差は小さくなる.(3)2線堤によるエネルギー減衰は陸側法面に形成される乱れの影響であり,堤高さが増加すると乱れは増大するが,越流高さが増加するため盛土の形状による構造物前面の比エネルギーは同程度で設置距離の影響も小さい.(4)跳水の影響を透過性の仮想構造物として数値モデルに考慮することで水位や流速を再現できることなどが分かった.
  • 許 松, 鴫原 良典, 多田 毅, 林 建二郎
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_277-I_282
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     船舶群が津波により漂流・座礁する水理実験を行い,漂流現象の傾向を分析するとともに,数値モデルの精度について検証した.実験から,船舶漂流には漂流開始する位置に対し一定のパターンが存在するが,流況の複雑さや他の船体との接触などによるばらつきも見られた.剛体モデルに基づく漂流物移動の数値計算により,船舶に作用する慣性力,抗力についてモデルの違いによる影響を調べた.特定の船舶の漂流を評価する場合,抗力には流速分布を考慮したモデルが必要である一方,船舶群全体の拡散状況を評価する場合はモデルの違いによる影響は小さい.さらに座礁の再現には底面摩擦を考慮する必要があることがわかった.以上から,不確定性が大きな現象を除き,剛体モデルにより津波時における船舶群の漂流・座礁範囲の評価は可能であることが示された.
  • 野島 和也, 桜庭 雅明, 小園 裕司
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_283-I_288
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     本研究では,比較的広域かつ多種の漂流物の移動・滞留状況を把握する実務的な漂流物シミュレーションに対して,近年開発・施工が進められている津波バリアなどの津波漂流物対策工の影響を考慮した漂流物計算モデルを開発した.本計算モデルでの津波バリアは,バリア位置での漂流物の停止,漂流物の津波バリアの支柱間の通過,水位が津波バリアを超過する場合の流出を扱うものとした.また,津波バリア前面において漂流物が流れをせき止めることに起因する水位上昇による漂流物の流出メカニズムや,バリア支柱間の通過に際しての漂流物の回転も考慮した.実験に基づくコンテナの漂流捕捉効果の比較検討,各種漂流物と津波バリアの諸元の違いによる検討を行った.
  • 木村 雄貴, 下園 武範, 佐藤 愼司
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_289-I_294
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     東北地方太平洋沖地震津波による被害を契機に粘り強い海岸堤防の整備が推進されているが,その減災効果を評価するためには破堤による後背地への影響を明らかにする必要がある.本研究では,後背地の地形特性が異なる二つの地域(大槌町および仙台南部地域)を対象として高解像度氾濫モデルに基づき破堤の影響分析を行った.広大な低平地を有する仙台南部地域では破堤に伴う人的被害,建物被害の有意な増大が示唆されたが,堤防後背地の狭い大槌町では破堤による影響は限定的であった.仙台南部地域においては破堤を考慮することでより現実に近い被災状況が再現できることが示された.また,高解像度モデルの結果をもとに堤防背後の洗掘についても分析を行った結果,局所流速に基づく簡便な指標によって実際の洗掘状況を説明できることが分かった.
  • 安田 誠宏, 丸山 拓真, Katsuichiro GODA, 森 信人, 間瀬 肇
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_295-I_300
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     内閣府中央防災会議は,南海トラフ巨大地震を想定した11ケースのすべり分布を公表したが,ある地域に対して1つの最大シナリオだけが与えられることになる.本研究では,津波の不確実性評価を行うことを目的とし,確率津波モデルを開発した.確率津波モデルとは,確率的にすべり分布を作成し,生成したすべり分布から初期水位(確率津波波源)を複数求め,これらの確率津波波源を用いて津波伝播計算を行う一連の過程である.高知県と和歌山県の沿岸に仮想観測点を設けて津波の時系列を出力し,最大津波高の分散を求めた.さらに,最大津波高の出現確率に逆ガウス分布をフィットさせ,中央防災会議による想定最大津波高の非超過確率を求めた.いずれの地域においても予測津波高および津波到達時間にばらつきがみられ,すべり分布の違いが想定値に大きく影響を与えることがわかった.
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