抄録
平成24年7月九州北部豪雨期を対象として有明海の3次元流動シミュレーションを行い,諫早湾内で形成された大規模塩分成層構造を再現した.無風状態,北東風10 m/s,南西風10 m/sの3つの風況条件を設定し,筑後川起源水と菊池川起源水の風応答特性を調べた.諫早湾における河川粒子の滞留時間と存在割合を定量化し,それに基づいて代表滞留時間スケールを評価した.北東風の連吹によって,筑後川起源水の諫早湾への流入は促進されるとともに,湾外への流出も強化される.このため湾内における滞留時間は無風時に比べて短くなる.一方,南西風が連吹する場合は諫早湾内への流入が抑制され,滞留時間は非常に短くなる.菊池川起源水の諫早湾への流入は北東風の連吹によって抑制され,南西風の連吹によって促進される.