海上風乱流は風波の生成発達において第一義的に重要である.しかし海上では波浪が大気乱流に影響を及ぼすため波浪境界層が顕著となり,接地境界層理論は適用できない.本研究では海洋観測プロジェクトSHOWEXで得られた海上風乱流および水位変動データから様々な海象条件下における乱流特性の解明を試みた.風波が卓越する場合,波浪境界層内の乱流フラックスは相似なスペクトル構造を示す.波浪スペクトルは発達に対してピーク周波数帯でエネルギーが増加するが,高周波数側ではPhillips型スペクトルが現れ,そのエネルギーレベルも波形勾配も発達に関係なく一定の値となる.一方,うねりが卓越する場合,乱流スペクトルは波浪のピーク周期帯で上向きの運動量輸送が顕著となる.下向き・上向き運動量フラックスの比および波形勾配は海上風と波速の比に対して増加する.