2017 年 73 巻 2 号 p. I_1525-I_1530
本稿では,過去の津波災害の経験や教訓を後世に伝える役割を担い得る「津波伝承知メディア」の中の津波碑と津波由来地名に着目し,東日本大震災での人的被害データを用いて,これらの津波災害での人的被害の低減効果を統計的に検討した.その結果,3つの結論が得られた;1) 東日本大震災では,津波伝承知メディアが存在する地域の方が,存在しない地域に比べて人的被害は大きかった.2) 東日本大震災では,津波伝承知メディアの存在する地域で相対的に最大浸水深が大きく,そもそも大きな津波に襲われ,人的被害が大きくなるようなハイリスク地域に津波伝承知メディアが存在していた.3) 人的被害発生への影響要因を総合的に考慮した統計分析から,津波碑については,人的被害の低減効果を有していた可能性が数値的に示された.