2017 年 73 巻 2 号 p. I_1663-I_1668
瀬戸内海全域を対象とした流動・水質予測精度向上を目的として,領域海洋循環モデルROMSとROMSに適合させた3次元変分法に基づくデータ同化(DA)エンジンを連成し,瀬戸内海高解像度ROMS-3DVARシステムを開発した.通常の海洋DAにおいて核心的に重要なデータである衛星海面高度やArgoデータは内湾である瀬戸内海では使えないため,試行的に船舶による水温塩分の定期観測データを同化し,観測システムシミュレーション実験(OSSE)によって性能評価を行った.3DVARの導入によって水温・塩分分布の再現性が飛躍的に向上することを定量的に示すとともに,特に塩分場の再現性向上のためには単にデータ同化だけに頼るのではなく,精緻なforwardモデルと正確な流入淡水情報が欠かせないことを示した.