抄録
気候変動に伴い河川水温が上昇傾向にあることが明らかになっているが,その沿岸域の水温構造への影響は不明確である.そこで,閉鎖性内湾である有明海を対象として,流入する全一級河川の非感潮域にあり最も河口に近い流量観測所において,2015年8月以降の河川水温連続観測を実施した.これにより,毎正時の河川流量と河川水温についてのデータセットが完成したので,これを入力条件とする有明海の密度成層に関する数値シミュレーションを実施し,河川水温の時間変動が与える有明海での水温成層構造への影響を評価することを試みた.その結果,主に夏季出水時において,河川水温の与え方により水温成層の発達の再現性が異なることや,混合期へ入る過程において基底水温の再現性が異なることなどが明らかとなり,河川水温が与える海域の水温構造への影響が示された.