本研究では進行波の砕波の発生条件を明らかにすることを目的に,一定水深域での進行波の理論解析と,一様勾配水深域で遡上する進行波の数値計算が行われる.理論解析ではハイパボリック波と孤立波について,数値解析では周期波と孤立波について,波高水深比の増加に伴い水表面の水粒子の運動エネルギーが発散的に増加し,位置エネルギーを超えるという特徴的な現象が示される.さらに,波高水深比の増加に伴う水表面の水粒子の運動エネルギーの発散的な増加は,一定水深域では波高水深比が砕波が起こるとされている波高水深比と同程度の時,一様勾配水深域では定性的に波が崩れる直前に起こることが明らかにされている.このことから,水表面の水粒子の運動エネルギーの発散的な増加に起因して波は砕波に至ると結論付けられている.