2018 年 74 巻 2 号 p. I_1255-I_1260
汽水湖における貧酸素水塊形成時の水質を想定し,ヤマトシジミに塩分,溶存酸素,硫化水素を外乱として与え,総抗酸化力(ORAC)と抗酸化酵素(スーパーオキシドジムスターゼ,カタラーゼ)の活性を評価した.その結果,これらの酸化ストレスマーカーには有意な応答は見られなかった(p>0.05).一方,貧酸素水塊形成時の水質に都市下水を外乱として付加したところ,ORACが減少した(p<0.05).また,都市下水のみに曝露したケースとはORAC挙動が異なった(p<0.05).単一要因と複合要因では,ORACの応答が異なる場合があることが示された.以上より,人為的水質要因に対するヤマトシジミの抗酸化力を評価する場合には,摂餌条件を含めたバックグラウンド要因を考慮する必要性が示された.