2018 年 74 巻 2 号 p. I_241-I_246
津波に対する安全性評価では,波圧だけでなく,それによって構造物に生じる変形を評価する必要がある.一般に津波波圧は,津波衝突時の段波波圧とその後に続く重複波圧に分けて考えられるが,段波波圧の作用時間は短いため,動的応答を考えた場合,波圧に対する変形は重複波圧に対し相対的に小さくなると考えられる.本研究では,大規模津波を対象に鉛直構造物の応答特性について水理実験を実施し,その結果から,段波波圧が重複波圧より大きい場合でも,変形(ひずみ)は重複波領域の方が大きくなること,ただし砕波を伴う場合には段波領域で最大ひずみが発生する場合があることなどを明らかとした.また,模型実験では構造物の物性を完全に再現することが困難なため,数値解析の適用性について検討し,精度向上には適切な減衰効果を反映する必要があることなどを示した.