抄録
佐賀平野における各種高潮対策施設の効果を高潮氾濫シミュレーションを用いて検討した.まず,既往最大規模の台風を想定し,多数の台風経路について網羅的に高潮シミュレーションを実施することで佐賀平野における最悪経路を決定した.既往最大規模の台風が最悪経路を通過するという条件のもと,海岸・河川堤防の嵩上げの効果,佐賀平野に存在する旧堤防や有明海沿岸道路の二線堤としての減災効果,平野内150箇所以上に設置されている排水ポンプを用いた浸水被害後の排水効果,水門を閉めるタイミングによる浸水状況の違いを検討した.対策施設の効果による浸水深,浸水範囲および浸水開始時間の変化を調べ,各施設の効果の程度を定量的に明らかにした.その結果,対策施設によって減災効果が期待できる地域もあれば,逆に被害が深刻化する地域もあることが分かった.