浅海生態系における気候変動の緩和機能(大気中二酸化炭素(CO2)の吸収機能や生態系内への炭素貯留機能)が注目され始めているものの,その全国推計例はない.そこで本研究では,気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のガイドラインに倣い,生態系内の炭素貯留量の増加量を大気中CO2の吸収量と定義し,国内外の既往文献をベースにデータ解析した.そして,我が国の浅海生態系(海草藻場,海藻藻場,マングローブ,干潟)における年間CO2吸収量の全国推計を試みた.その結果,現状におけるCO2吸収量の平均値は132万トンCO2/年,上限値は404万トンCO2/年と見積もられた.このような現状値あるいは将来値の推計を進めていくことは,地球温暖化対策計画における吸収源対策に浅海生態系を新たに定める検討や,浅海生態系の価値評価において有用であると考えられる.