2019 年 75 巻 2 号 p. I_361-I_366
巨大津波は,波だけでなく大量の土砂を伴い被害の拡大や復旧の大幅な遅れをもたらす.一方これらの土砂は津波堆積物として,既往津波の知見を多く含むことから,数値計算における津波波源推定への活用が期待されている.しかし,海域の土砂移動と比べ,陸域の土砂移動の検証が不十分のため,定量的な評価や波源推定には至っていない.本研究では,津波堆積物分布と断層パラメータとの関係性を検討するため,模擬地形を用いた陸域の津波堆積物形成に関する土砂移動数値実験を実施した.その結果,陸域の勾配と砂の粒径によって,堆積砂の砂層厚が増加から遡上先端にかけて減少し始める特徴的な転換点が形成されることが確認された.この転換点は,戻り流れの有無に影響されず,遡上到達距離の推定や特定の規模であれば推定が可能であることが明らかになった.