2020 年 76 巻 2 号 p. I_409-I_414
巨大津波が来襲した遠浅海岸であるタイ,プラトーン島と仙台平野の津波堆積物は,土砂供給源が大きく異なることが示唆されている.その要因を明らかにするため,本研究では遠浅海岸における津波堆積物の形成過程に関して,津波特性に着目した数値的検討を実施した.数値実験の結果,第一波の最大押し波に先行する引き波が大きい場合,より沖合で侵食が発生するため,極浅海遡上時の浮遊砂濃度が高くなり,汀線付近や極浅海の土砂の巻き上げが抑制されることが示唆された.一方,先行する引き波が小さい場合,極浅海遡上時の浮遊砂濃度が低く,汀線付近の土砂の巻き上げが発生しやすくなることが示唆された.したがって,先行する引き波が大きい場合,海起源の土砂の割合が高く,先行する引き波が小さい場合,陸起源の土砂の割合が高くなる可能性がある.