2020 年 76 巻 2 号 p. I_889-I_894
高潮や降雨の発生直後は,堤体下の地下水位が上昇し,地震に対する液状化リスクは高まることになる.そのため,河川堤防においては地下水位計による連続観測を推奨しているが,海岸堤防においては,維持管理費等の制約から地下水位計による連続観測は困難な状況にある.
本研究では,高潮や降雨の発生直後における海岸堤防の液状化リスクの把握を目的とし,海岸堤防下の地下水位に影響を及ぼす因子を検討するとともに,短期間の地下水位観測値と入手が容易な雨量等の観測値を基に簡易に海岸堤防下の地下水位を推定する手法について検討を行った.その結果,地下水位に影響する主因子として天文潮位,潮位偏差及び降雨が示唆され,それらを説明変数として作成した地下水位推定式は,液状化リスクの評価に対して十分な精度を有していることが確認された.