2020 年 76 巻 2 号 p. I_961-I_966
マングローブ・海草場は高い気候変動緩和機能を持つ可能性がある.この機能は,大気CO2の吸収,吸収した炭素の生物生産による固定,固定した炭素の堆積物深部への貯留,という一連のプロセスに支配されるが,その実態は未解明である.本研究では,このプロセスの実態と支配要因を明らかにするため,浮遊系・底生系での生物化学物理過程を網羅的に組み込んだマングローブ・海草複合生態系モデルを開発し,西表島ユツン海域に適用した.解析の結果,炭素固定の主要因はマングローブ・海草の純生産と底生動物の殻生成であった.また,マングローブは大気CO2の吸収を促進し,吸収した炭素の72%を貯留,28%を沖側に流出していた.一方,海草は大気CO2の放出を抑制し,沖側から炭素を取込み,海草による炭素貯留の62%は沖側由来であった.