2021 年 77 巻 2 号 p. I_907-I_912
津波防災・減災のために海岸林を活用する場合,その限界を適切に把握することが不可欠である.現在,最大浸水深に基づく被災基準が提案されているが,その適用可能性は十分に検証されていない.また,東北地方太平洋沖地震津波においては津波自体以外の環境要因,すなわち海岸林周辺の地形的特徴がその被災に影響したことが指摘されている.本研究では同事例を対象に,津波の規模と地形的特徴を海岸林の被災に関連づける統計的分析を行なった.その結果,津波の運動量流束が大きい場合,海岸林自体の標高が低い場合,および海岸林の直ぐ海側に防潮堤などがある場合に被害が大きくなることが確認できた.さらに,同様の手法により海岸林の被災確率を評価するモデルを構築したところ,最大浸水深のみによる基準と比較して高精度で被災を予測できた.