2022 年 78 巻 2 号 p. I_193-I_198
一級河川から中小河川を含めた河口域の複合氾濫リスクの評価には,台風に伴う降水・暴風による河口での河川と高潮による氾濫までを一体に解く数値モデルが必要不可欠となる.しかし河川や高潮モデル間の不連続性や技術的な課題からそのような開発研究事例はほとんどない.本研究では流量を高潮モデル中の河川水位に自動変換するアルゴリズムを導入し,大気-海洋-河川結合モデルを開発した.開発したモデルを用いて,2018年台風24号襲来時の豊川(一級河川),柳生川・梅田川(中小河川)の河川水位挙動を高精度に再現した.また仮想的な条件による感度実験の結果,高潮と洪水による水位上昇量は,柳生川では豊川の7.3倍,梅田川では豊川の3.2倍高いことが明らかとなった.さらにこれらの中小河川では高潮と洪水の最大水位発生時間が河口で重複するため,複合氾濫リスクが高いことが明らかとなった.