2022 年 78 巻 2 号 p. I_535-I_540
高知海岸では,河川からの供給土砂が減少したことで,海岸侵食が問題となっている.さらに,気候変動による海面上昇や波向の変化等に伴って海岸侵食の進行が懸念されている.本研究では,物部川流砂系海岸を対象に,気候変動が海浜変形に及ぼす影響を明らかにすることを目的とし,これまでの汀線変化状況の実態分析と等深線変化モデルを用いた現状の漂砂移動特性の検証を行うとともに,観測データに基づく潮位・波浪の変化特性に関する分析を実施した.これより,現状でも潮位に加え波浪も気候変動の影響が顕在化し始めていること,近年の波向は僅かに東方向(反時計周り)へ変化し西向きの漂砂量が増大傾向にあることがわかった.また,河口の両岸で西向きの漂砂が卓越しており,反時計周りの波向変化は東側の海岸侵食を深刻化させることが確認された.