2022 年 78 巻 2 号 p. I_865-I_870
海域における環境DNAを活用した生物モニタリングでは,採水地点や時刻の選定のために流れの影響を把握することが重要である.環境DNAと生物の両方が移動する場における流れの影響評価は困難であるため,本研究では固着生物であるアマモを対象とした環境DNA分析結果に対する流れの影響把握を目的とし,実海域の複数地点におけるアマモの環境DNA量と粒子追跡計算による平面分布から流れの影響評価を試みた.アマモの環境DNA分析では,藻場から数100m離れた位置においても定量下限を超えた値が得られ,移流によって藻場外においても環境DNA量が得られる場合があること,対象とした藻場では沿岸方向の流れによって藻場から離れるほど値が低下する傾向となるが,還流や岸(藻場)に向かう流れによってDNA量が高くなる地点があることが示唆された.