2022 年 78 巻 2 号 p. I_895-I_900
播磨灘のイカナゴ漁獲量は近年減少傾向にあり,貧栄養化と水温上昇の影響が指摘されている.貧栄養化や水温上昇は,生産者や高次消費者から成る食物網全体に影響を与え,イカナゴ資源の動態もその結果である.本研究では,高次生態系モデル;Ecopath with Ecosimモデルに,海洋生物の水温・栄養塩に対する生理応答とイカナゴの生活史を組込んだ,イカナゴEwEモデルを開発し,播磨灘に適用した.本モデルによる水温・栄養塩の感度解析の結果,イカナゴは,貧栄養化が現状より進行すると減少し,水温1度上昇では増加,2度上昇では減少することが示された.また,イカナゴの減少は,餌;CalanusSinicusの減少に伴うイカナゴ生産量の低下が主要因であることが推察された.