2023 年 24 巻 p. 65-80
本稿の目的は,「リーダー主義」論を概観するとともに,「リーダー主義」の日本における展開を歴史的に跡付けることで戦後日本の大学経営の政策に関する新たな視点を提示することにある。近年,学長のリーダーシップについての議論が盛んであるが,本稿ではその実態ではなく,その言説に着目し,学長のリーダーシップがどう位置づけられてきたのかを分析する。このことによって実際のリーダーシップとリーダーシップ論との乖離を前提としながら,近年のリーダーシップ概念の混乱を整理し,もって戦後日本の大学経営に関する理念が持つ特質の一端を明らかにする。このため西ヨーロッパで発展してきた「リーダー主義」の議論を参照し,戦後日本の歴史を分析する。結果として,三八答申から四六答申にかけて確立した学長のリーダーシップについての三つの命題がその後も継続したことが明らかになった。ただし,その文脈は歴史的に変化してきた。このことはリーダーシップの歴史・社会的な相対性を意味している。