会計史学会年報
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事象アプローチの源泉と展開
多欄式財務諸表に関する議論を中心として
竹島 貞治
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2017 年 2017 巻 36 号 p. 1-23

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抄録

G. H. Sorter 教授は,今からおよそ50年前に「基礎的会計理論への事象アプローチ」と題する論文をThe Accounting Reviewに発表し,この論文において「事象アプローチ(events approach)」と称する会計への新たなアプローチを提唱した。Sorterはこの論文において伝統的会計理論および会計実践に対してさまざまな提案を行っていたが,それらの提案の一つに多欄式財務諸表に関するものがある。多欄式財務諸表のアイディアは,ASOBATにおいてはじめて公式見解として提出されたが,当時はほとんど注目されなかった。だが,近年,公正価値や包括利益のような現代的課題との関連で再び注目を集めている。本稿では,多欄式財務諸表のアイディアを中心に,Sorter[1969] の理論的源泉およびその現代会計への展開過程をかえりみて,Sorter[1969] の議論内容との共通点および相違点を浮き彫りにし,事象アプローチに関する一連の議論が現代会計に対して示唆することについて考えていく。

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© 2017 日本会計史学会
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